2022年6月4日、奥多摩の最深部に近い天祖山(てんそさん)に登ってきました。タイトルにもあるように自分にとって「多摩100山」の最後の山となり、100山を達成したことになります。
多摩100山とは
そもそも「多摩100山」って何よと思われる人もいるかもしれません。そんなこと言って盛り上がっているのはヤマレコユーザーだけでしょうから(他の山SNSにも同様のものがあったらすみません)。
多摩100山とは、雑誌『新ハイキング』を刊行している新ハイキング社より出版された『多摩100山』という本がもととなっており、それをどなたかがヤマレコでリスト化したので、僕を含めみなさん制覇を目指して歩いているのです。
これとは別に、日本山岳会東京多摩支部が選定した「多摩百山」というのもあるし、「東京里山100選」なんてのもあって、これらをコンプリートしようと日々歩いていたりするわけです。
その中で、僕は「多摩100山」が最初にコンプリートに近かったのでこれに含まれる山をメインに最近は歩いてきました。その100座目が今回の天祖山だったわけです。
なぜ天祖山が最後だったのか
「多摩100山」には奥多摩の最深部にあたる長沢背稜に点在する山々もいくつか含まれていますが、それらはすでに歩いていて、天祖山だけがずっと残っていました。それはなぜかと言うと、山を始めた2010年頃にさかのぼります。
山を歩き始め「山と高原地図 奥多摩」を買い、ヤマレコに登録し・・とやっていくなかで、たまたま天祖山で「滑落による死亡事故」が2件ぐらいあったみたいな話を知り、まだ初心者同然だった僕は、そこは行ってはいけないところなんだろうとビビッてしまい、以降ずっと避けてきたのでした。
それと、やはりアクセスの悪さ。東日原のバス停から林道を1時間ぐらい歩かないとならなかったり、登ったあとの行程が日帰りだと難しかったり、かと言ってピストンは嫌だしなどと、いくつかの理由が重なっていたのもなかなか足が向かなかった理由でもあります。
しかし、「多摩100山」(そして「多摩百山」)に天祖山が含まれている以上は行かなくてはならないという訳で、意を決して登ることにしたのです。
計画
計画を立てる上で最も重要なことは「日帰り」で行けるだろうかということでした。東日原バス停発の奥多摩駅行き最終は18:47(土曜日)なので、恐らく戻って来れるだろう、だけどそんな遅くなるの嫌だなと思ったので、せめてそのひとつ前の17:30のバスには乗るという目標で考えました。
また、奥多摩駅から東日原行きのバスは7:28発に乗る!これはもう鉄板でした。なぜなら、東日原から登山口まで林道歩きが約1時間、登山口から天祖山までは3時間という想定でいたので、東日原を8:00にはスタートしたかったからです。それでも天祖山にはお昼に到着だなんて。
では、天祖山に12:00ごろ着くとして、その後をどうするか。まず、ピストンはありえませんでした。どうせなら赤線(これもヤマレコユーザーじゃないと伝わりにくいですが、自分の歩いたルートが地図上で赤い線で描かれれるのです)を繋げたいので、長沢背稜に出ます。
そこからが悩みました。当初「ウトウの頭」があるタワ尾根を下る予定を立てていました。タワ尾根なら過去に登ったことがあるので、分かりやすいだろうと。しかし「奥多摩登山詳細図」を眺めていると、天祖山の尾根とタワ尾根の間に「中尾根」という尾根があります。「山と高原地図」には載っていない尾根で、整備された登山道ではありません。
よし、ここを行こう!と思ったのが山行の3週間ぐらい前。そこからググったりヤマレコを漁ったりして情報を集めました。尾根を下っているうちはいいけど、沢に出てからがややこしそうという印象を抱きつつ、当日を迎えることにします。
そして前日、ある重大なことに気が付きます。
奥多摩駅から7:28発のバスに乗るためには、我が地元の小田急線柿生駅5:07の始発では無理ということが分かりました。始発で出ても奥多摩に着くのが7:54、そのような時間だと東日原行きのバスは8:35発。9:00スタートでは下山がかなり遅くなる・・・。
どうにか奥多摩駅に7:25までに着けないものか、前乗りしないとダメなのか、いくつか方法を調べていく中で、一つだけありました。隣の新百合ヶ丘駅を5:00始発という電車があるので、新百合ヶ丘まで歩くことに決めたのです。これで準備OKとなりました。
こんなですよ、始発前の新百合ヶ丘。これだけ人がいないところは初めて見ました。
東日原から登山口まで
無事、奥多摩駅7:28発のバスに乗ることができ、7:50ごろに東日原バス停に着きました。2019年の台風19号で日原への道が崩れてしまって、当分日原方面には行けないなと思っていましたが、2020年5月に復旧、しかしコロナ禍で結局は2022年になってからようやく来たという感じです。
前日は都内ではゲリラ豪雨も降って、この日も天気は危ういのではと思いましたが、写真の通り青空が広がっていました。こうでなくては。
始発、しかも隣駅まで歩いてからほとんど間髪入れずに電車に揺られてきたので、バス停でおにぎり2つを補給してから出発します。
バス停より鍾乳洞方面へ向かって歩きます。平日だとこの辺りまでバスが来るようですが、土日は東日原止まりなんですよね。昔、高校生ぐらいのころは「ロードマン」といういまのロードバイクのような自転車でここまで何度か来たものです。いま思うと途中の坂とかよく人力で自転車こいだよなと。電動自転車じゃないといまは無理よ。
橋を渡って左手へ曲がったところです。ここから日原林道となります。どのぐらい歩くのやら。
途中に案内図がありました。これによると八丁橋から天祖山までは2時間40分、八丁橋までの時間も書いておいてほしいですね。とはいえ、あまり人も通らないようなところにこういう案内があるのは嬉しいですね。
林道歩きをしながら途中、日原川を眺めます。なんて水がキレイなんだろう。山など登らず、川沿いでまったりと過ごして1日終わりたいという気分になります。実際、1日もその場にいられないと思いますけどね。
林道もいつのまにか舗装路から未舗装になり、新緑の中をひたすら歩きます。たまに通る風が涼しいので、歩いていて気持ちが良いです。
ここは八丁橋の手前の、車を停めることができる一帯です。紛らわしいですが、写真に写っているのは八丁橋ではなく、孫惣谷林道へ通じる橋です。帰りはここから出てくる予定なのです。
八丁橋は写真の左側へ行きます。すぐにロープだったか鎖が張ってあって、そこから先は車は行けないようになっていました。
八丁橋を渡るとすぐに登山口がでてきます。東日原バス停からここまで45分ほどで来ることができました。右側の登っているところが天祖山に向かう道ですが、肉眼で見た限りではこの登りはもうちょっと急だったと記憶しています。なぜ写真だとこうも緩やかに見えるんでしょうね。
ここでザックを下ろし、5分ほど休憩しました。その間に富田新道方面へ向かって進む人が2名ほどいました。
いざ、天祖山へ
では、登って行きます。もういちど書きますが、写真よりも実際は傾斜があります。見た瞬間にウンザリしたぐらいなので。
道は石垣になっていてしっかり造られていますが、九十九折でひたすら登って行きます。写真の上の方の左側に見える陽の当っているところまで行きます。
歩き始めて5分ちょっとでこんな感じです。林道がかなり下に見えますね。
この写真の左下から登ってきて手前へ折り返すのですが、ここにロープがありました。ここは手前から下ってきたら勢いでこのまま真っ直ぐ行ってしまってもおかしくないような場所でした。崖っぽく見えますが、もうちょい覗き込んでみると道と勘違いしそうな雰囲気でもありましたので、恐らく滑落事故があったというのはこういうところなんじゃないかと。
随所にロープもあって、こういう時は遠慮なく使わせてもらっています。ヤマレコとかでも「ロープがありましたが使わなくても進めます」みたいなコメントを見かけるし、自分もそんなことを書いていたことがあったかもしれませんが、いまはそういう表現はしないようにしています。イキってるみたいなのと、ロープが設置されているのはちゃんと理由があるからだと思うので、それを否定するようなことは言わないようにしたいからです。
急登を登って約30分、ようやく尾根に乗りました。いやぁ、あと2時間半ぐらい登り続けるのかと思うと長く感じますね。
ちょっとザックを下ろして休憩します。なお、最近の山行ではローソンでゲットしたリラックマのタオルを使用しています。だいたい首に巻いているので、黄色いタオルが目印ですね。
どれが道かもはや覚えていませんが、尾根に乗っても登りは延々と続きます。
道標はありますが、他の奥多摩の登山道と比べると少ないと思えたのは気のせいですかね。水源を管理する巡視路を示す道標もありました。
しばらく行くと開けたところが出てきて、これが目に飛び込んできました。皆さんがヤマレコとかで「ロボット雨量計」と呼んでいるやつですね。山間部の雨量を測ってデータを飛ばしているのでしょうか。網で柵がされていたので近くには行けない(行こうと思えば行けたけど)です。
そして雨量計のすぐそばにはこれ!かなり崩壊しかけていますが、最初これが「会所」なのかと思いましたが、こんな崩壊してないと思ったのできっと違うだろうと。大日神社というらしいです。
とにかく登って行きます。登山口が標高700mぐらいに対し、天祖山は1723m。標高差1000mあるところを、距離にして4㎞弱で登るわけですから、そりゃあまあ緩やかなわけがない。途中のピークでは若干緩やかになるものの、その反動で急登が来るって感じですね。
大楢ノタワ(おおならのたわ)のちょっと手前、1355mのピーク。ここに着く直前でトレランの人とすれ違ったのかな。天祖山までに唯一見かけた人でした。
途中、このような岩場もでてきます。ほんのちょっとではありますが。
そうかと思えば、緑に覆われた場所も出てきて、この尾根は景観としては富んでいて飽きません。ひたすら登るのが辛いだけで。
そして出てきました、「会所」と呼ばれている建物。長年写真でしか見たことがなかった建物をついに肉眼で見ることができて、この時は感激して思わず「おおっ!」とか声に出してしまいました。誰もいなくて良かった。
中はこんな感じになっています、もしここで大雨に降られたり、下山できなくなったら利用できそうですが、なんとなく怖いですね。夜とか特に。
会所から数十メートル歩いた先には天祖神社、そう、ついに天祖山に着いたのです。多摩100山を制覇!
地味な山頂の標柱ではありますが、頂上です。天祖山に着いたのです。
長年「行ってはいけない」山と思っていたのに、何でもっと早く来なかったのかとすら思いましたね。いやぁ、感慨深い。しかも当初予定していた12:00ごろ到着よりも30分早い11:32着、体力がガタ落ちしているわりにはなかなか良いペース。さすが前の週に塔ノ岳に行って脚を作っておいただけある。
ここでおにぎりを食べながら15分ほど休憩して、多摩100山をコンプリートした喜びも含めてこの場の空気を感じ取っていました。
それにしても、なぜこんなところに神社があるのだろうか。ちょっと調べてみたところ、明治時代に「天学教」の社殿として開かれたらしい。しかも本宮は横浜市港北区にあるとか・・・。これ以上調べたらきりがないので、興味のある人はここに書いたキーワードで調べてみたください。
かなり長くなりましたが、今回はここまでとします。天祖山から先、長沢背稜へ出て水松山、そこから中尾根を下って孫惣谷林道へ出るのは次回です。地図もその時に載せます。
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